私は十数年保険業界に携わっていますが、「一般的に火災保険は認知度が低いな」という感覚があります。近年、台風被害やゲリラ豪雨、集中豪雨などによる自然災害リスクが上がり多少意識されるようになりましたが、やはり自動車保険と比べると身近でありながら身近な立ち位置にはない保険と思います。
失火責任法とは
さて、みなさんは「失火責任法」(通称:失火法)という法律をご存知でしょうか?
失火によって他人の家が延焼しても、失火者に重大な過失がなければ、損害賠償責任を負わせないという法律。
逆に言えば、お隣さんが火事を起こして自身の家に延焼しても、お隣さんに損害賠償を請求することができないということです。
要するに、「自分の家は自分で守りなさいよ!」ということなんです。
類焼損害補償特約といった「隣家等第三者の所有物に損害が発生した場合に保険金を支払う」とする特約もありますが、失火者の火災保険に必ずこの特約が付いているとも限りません。というより、付いていない方が多いと思います。
ローンを組んで立てた自宅が、お隣さんの火災によって消失してしまった。失火法の観点から損害賠償請求はできず・・・だから火災保険の加入は重要なのです。
火災保険の補償範囲は「火災による事故」だけではない。
字を読んでのとおり、火災保険は火災による事故を補償する保険です。
しかし火災による事故のほかにも、「風災」、「水災」、「ひょう災」、「落雷」、「破裂・爆発」、「建物外部からの物体の落下・飛来・衝突」なども補償範囲としています。
事故・リスク | 補償内容・事故例 |
●火災 | 失火やもらい火による火災の損害の補償 例:火災により住宅が燃えてしまった |
●落雷 | 落雷による損害の補償 例:雷が落ちて家電製品がショートした |
●破裂・爆発 | 破裂や爆発による損害の補償 例:漏れたガスに引火して爆発が発生した |
●風災・雹災・雪災 | 風・雹・雪などによる損害を補償 例:強風で窓ガラスが割れた、割れた窓ガラスから雨が吹き込み家電製品が使えなくなった |
●水濡れ | 漏水などによる水濡れの損害を補償 例:給排水設備の故障により部屋が水浸しになった、マンション上階からの水漏れで部屋が水浸しになった |
●水災 | 台風や集中豪雨による損害を補償 例:大雨で床上浸水してしまった |
●盗難 | 盗難にともなう、盗取・損傷・汚損による損害を補償 例:泥棒に鍵や窓ガラスを壊された、泥棒に現金や家電製品を盗まれた |
●騒擾・集団行為等にともなう暴力行為 | 騒擾や集団行為による暴力・破壊行為の損害を補償 例:労働争議に巻き込まれて家を壊された |
●建物外部からの物体の落下・飛来・衝突 | 建物外部からの物体による損害を補償 例:家に車で突っ込まれた、飛んできた野球ボールに窓ガラスを割られた |
基本的に「何が原因で事故が発生したか」という視点で見ますので、例えば「台風で家の屋根瓦が飛んで行ってしまった」という場合は「風災」で補償対象となることが考えられます。
「集中豪雨で床上浸水してしまった」「台風で大雨が降って床上浸水してしまった」ということであれば「水災」で補償対象となります。
【注意】地震、噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による損害は「地震保険」で補償対象となり、火災保険では補償対象外となります。
火災保険の「保険の対象」とは
「保険の対象」は大きく分けて、「建物」と「家財」になります。(「商品・製品」、「設備・什器」もあります。)
「どこまでを建物として見てくれるの?」という話をよく耳にします。
ざっくり言うと「建物に固着しているモノは建物の一部」としています。
例えばビルトインの食洗器は建物に固着していますので、「建物」として補償対象となります。
もしビルトインではなく、外付けの食洗器であれば、これは「建物」ではなく「家財」という扱いです。(「引っ越しを想定した時、荷物として持ち出せるモノは家財」と考えるとイメージしやすいです。引っ越しの時にトイレは・・・ふつう持ち出さないですよね?だから「建物」として見ます。)
さいごに
冒頭でも書きましたとおり、近年の自然災害リスクは格段に上がっており、いつ、どんな事故が起こっても不思議ではありません。
非常食や災害グッズなどをしっかり準備されるご家庭も増えてきたと思います。しかし台風のようにいつくるかある程度予測できる災害はまだ猶予がありますが、自然災害は突如として想定外の被害を与えてきます。また、お隣さんがいつ火事を起こすかももちろんわかりませんし、自身による失火も同じで、「火事を起こそう」などとはふつう考えません。それでも起こってしまう可能性があるのです。
今回は火災保険について書きましたが、火災保険の次はやはり地震保険についてですね。
次回は地震保険について書きたいと思います。
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